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インタビュー

「今こそ、私たちの仕事を知ってほしい」
西日本の雄の関東を支えてきた多古の工場、25年目の発信

有田美帆子さん&林洋介さん

株式会社カワトT.P.C.
千葉加工センター

千葉県多古町の工業団地の一角に、その工場はあります。本社は山口県。地元では誰もが知る存在であり、その関東圏のものづくりは、すべてこの千葉加工センターが担ってきました。四半世紀にわたり、看板よりも仕事で語り続けてきたこの工場が、いま初めて自らの歩みを発信し始めています。守るのは、2人のリーダー。「母を助けたい」という想いから飛び込み、在籍24年を数える有田さんと、「加工の仕事がやりたい」と板金の世界から転職し、14年目を迎える林さんです。動機も歩みも対照的な2人は、いかにしてこの工場を関東の要へと育て上げたのか。電話と図面だけで闘った時代、豪雨で物流が止まった日、そして友人のマンションで見つけた仕事の意義——。多古の日常の中で紡がれてきた、ものづくりと恩の循環の物語を伺いました。

ふたつの入口

母の一言と、父の現場から始まった、それぞれのものづくり

── まずはお二人がこの会社と出会うまでの歩みを教えてください。

有田:私は多古町の生まれです。短大時代は父の実家がある逗子の近くで、叔父の家に居候しながら過ごしていました。卒業後はオーストラリア留学を予定していたのですが、ちょうど9.11(アメリカ同時多発テロ)の時期と重なり、家族の反対もあって断念しました。そんな時代背景もあり、まずは子供服ブランドの店舗で接客のアルバイトをしていました。

── そこから、どのようなきっかけでご入社されたのですか。

有田:この工場の立ち上げメンバーだった母から、人が本当に足りなくて困っている、一緒に働いてくれないかと声をかけられたんです。就職が難しい時代でしたし、何より母を助けたいという気持ちがありました。面接をしてくださったのが、当時部長だった村田(現副社長)です。ものすごく親身に話を聞いてくださって、アルバイトではなく正社員として働かないかという熱意に背中を押されました。仕事内容も分からないまま、母ができるなら私もできるだろうと飛び込んで、気づけば在籍24年になります。

── 林さんはいかがですか。

林:出身は横芝です。父が戸建てを手がける建築の仕事をしていて、子どもの頃はその現場で遊んでいました。ものづくりへの興味は、あの原風景から始まったのだと思います。高校は工業科に進み、友人の影響もあって自動車の世界へ。整備や板金の仕事をしていました。

── そこから転職を決意されたきっかけは何だったのでしょう。

林:純粋に、加工の仕事がやりたいと思ったんです。震災の翌年(2012年)、加工に関する求人が数えるほどしかない時代でしたが、探していたときにこの会社の募集と出会いました。今年で14年目になります。

続けてこられた理由

「私が携わった部屋だった」。友人のマンションで確信した仕事の意義

── 長く続けてこられた原動力は何でしょうか。

有田:忘れられない出来事があります。友人が東京押上のマンションを購入して、遊びに行ったときのことです。マンションの名前にどこか聞き覚えがあって、部屋番号を見た瞬間、『あれ?』と。当時、うちは大手インフラ企業の床暖房の下請けをしていまして、会社に戻って図面を確認したら、確かに私が施工した部屋だったんです。20年近く経った今も、友人はその部屋で快適に暮らしています。自分の作ったものが誰かの日常を支えている。この仕事、この会社の歩みには確かな意義があるのだと、心から確信できた瞬間でした。

── 加工の仕事そのものの面白さについても教えてください。

有田:今はマネジメントやリーダーの役割をやらせてもらっていますが、加工の仕事は今でも大好きです。マンションは下の階から同じ間取りが続くことが多く、同じ物件を続けて担当することがあります。次も自分に回ってきたと分かったときに、『よし、前回の自分を超えよう』というスイッチが入ります。一つの部材を、今までより早く仕上げられたときの達成感はたまらないですね。ちょっとしたゲーム感覚なんだと思います。

林:私は板金時代に感じていた、直す楽しさが原点にあります。組み立てる感覚に近いんです。塗装の色合わせでは、ぼかしながらグラデーションのように色を合わせていく。形になったものが、きちんとした形であることの気持ちよさ。それは今の加工の仕事にもつながっています。

西日本の雄を、千葉から支えるハブ拠点に

日常のすべてが「ハブ」。連携の文化はこうして生まれた

── 御社は山口県では広く知られる存在だと伺いました。その中で千葉加工センターはどんな役割を担っているのでしょうか。

有田:関東圏のものづくりを担うのが、私たちの工場です。お客様は東京の方が多く、千葉だからこそお客様にすぐに納品できます。この距離の近さは大きな強みです。そしてもう一つの役割が、本社と営業と加工をつなぐ、つなぎ役です。本社以外にも加工センターはありますが、東京の営業と日常的に話せる拠点は多くないんです。

── その連携の文化は、どのように生まれたのですか。

有田:実は、林さんが入ってきてから風が変わったんです。営業さんからの相談の電話が彼にどんどんかかってくる。こういう加工はできますか、と事前に相談してもらえると、できる・できないをこちらで判断できます。本来なら本社に入る連絡が千葉に集まるようになって、連携が取れるようになりました。本人は気づいていないと思いますけど(笑)。

林:営業の方と話す機会が多いのは確かですね。発注や変更の経緯、会社としての背景も教えてもらえるので、この仕事が次の大きな物件につながる、と分かれば現場の士気も上がります。

有田:昔は電話だけのやり取りで、相手にも図面を広げてもらい、言葉だけで確認していました。今はZoomやタブレットで図面を共有できる仕組みを整えて、ミスを減らす工夫をみんなで重ねています。

── 拠点としての手応えを実感した場面はありますか。

有田:西日本で豪雨があり、物流が止まってしまったときのことです。本社で作った部材を一度千葉に集めて、営業と連携しながらトラックで各エリアへ届けました。東京では置く場所の確保が難しい。千葉がなかったら成り立たなかった対応でした。私たちがいなきゃいけない拠点なんだと、手応えを感じた出来事です。山口では広く知られる会社ですが、千葉ではまだまだ知られていません。だからこそ今、この多古の地から、私たちの仕事を知っていただく活動を始めているところなんです。

恩を、次の世代へ渡していきたい

── これから、どんな方と一緒に働きたいですか。

林:自分たちと一緒に、千葉加工センターを牽引していける人ですね。基本的なスキルは1年ほどで身につけられる仕事ですし、丁寧に教えていきます。そのうえで、本社が遠い分、自分たちで判断して動く場面が多い工場です。将来的には自分たちと一緒にリーダー役を担っていきたいという気持ちを持っている人がいると本当に嬉しいです。

有田:子育てをしながら働くお母さんにも、ぜひ来てほしいです。私自身、この会社で最初に産休を取った人間で、周りに助けてもらいながら続けてこられました。パート勤務なら夏休みをまるっと休める制度もあります。お子さんの体調で休まざるを得ないときは、みんなでフォローする。その代わり、出勤したときは頑張る。私たちが助けるから、あなたも頑張って、いつか誰かを助けられる人になってほしい。そう思っています。推し活で休みますと言われたら、どうぞ行ってらっしゃいと送り出せる、そんな空気の職場です。

── 新しい仲間が増えたら、挑戦したいことはありますか。

有田:千葉で新しいことにチャレンジして、うまくいったら本社に戻す。そんな循環をもっと回していきたいんです。会社は常に新しいことに挑戦していて、私が入った頃の仕事は、今はもうしていないくらいです。お客様に見ていただくための実験など、やりたいことはたくさんあります。仲間が増えれば、その挑戦の幅がもっと広がります。

多古の日常の陽だまり

── 最後に、お気に入りの場所やリフレッシュ方法を教えてください。

有田:多古町の「和ゃ」さんです。パートさんのご主人が営まれているお店で、本社から上司が来たときは、必ず2人で行きます。だし巻き卵が本当に美味しくて、それをつつきながら意見交換をしたり、プライベートの話をしたり。私にとって大切な時間ですね。

林:このあたりだと、桜の時期の八田桜通りの並木道が見事です。

有田:出勤のときに桜のトンネルを通ると、テンションが上がるんですよ。坂田のため池では花火大会も復活しました。地域の日常の中に、ちゃんと楽しみがある。それがこの場所の良さだと思います。

(編集後記)

取材を通じて心に残ったのは、この工場に流れる「恩の循環」でした。母に助けられ、面接官の熱意に助けられ、産休では仲間に助けられた有田さんが、今は助ける側に立っている。そして、林さんという一人の加入が工場の文化を変えたように、次に来る誰かもまた、この場所の風を新しくしていくように感じました。

知られている会社、人だけが凄いのではない。その背景には、いくつもの積み重ねと優しさの連鎖が繰り返されています。今、カワトT.P.C千葉加工センターの連鎖は上向きに、革新への確かな道を歩んでいるはずです。この先の5年、10年を一緒につくっていく仲間が扉を開いてくれることを願っています。


会社概要

地域社会の未来に向けて 株式会社 カワトT.P.C.

会社名: 株式会社カワトT.P.C.
代表者: 代表取締役 会長 川戸 俊彦 代表取締役 社長 桐田 直哉
公式HP: https://www.kwt-tpc.co.jp/
事業内容: 樹脂加工事業部
(1)住宅関連給水給湯プレハブ配管品企画及び製作
(2)前号の事業に付帯関連する一切の事業
テクマック事業部
(1)NC旋盤、マシニングによる各種金属加工製品製作
(2)前号の事業に付帯関連する一切の事業

今回の取材先: 千葉加工センター


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